コラム

お母さんと、子育ての話をしたかった

私の母は5年前に他界している。

 

母が病気で亡くなった時、上の子は2歳、ちょうど職場復帰して1年経った頃で、私はとても忙しかった。

 

今になって思うのが、自分が子育てしながら「この時はどうだった?」と言う話を母としたかったなぁと思う。

お母さん、なんであんなに早くいってしまったんだ。

私はいまだに寂しくて仕方ない。

 

私に子供が生まれたとき、母は

「私があなたを産んだとき、泣声がおもしろかったよ。ふつうはうえ~んと泣くのに、びぃーびぃーと泣いていたよ。本当にかわいかった」と笑っていた。

 

私が出産した直後に、病気がどんどん悪化していった母。

母の子育ての話を聞いたのは、これが最後だったかもしれない。

その後も母と話す機会はたくさんあったが、母は、自分の母親時代と私を比べることは一切なかった。

私も自分の子育てと仕事にいっぱいいっぱいだった。

「お母さんは、この時どんな気持ちだった?」そういうことを、もっとたくさん聞けばよかった。

きっと母は、あえて言わなかったのだろう。

子育てに仕事にてんてこ舞いの私を眺め、「自分の時はこうだったよ」と言う話はしないようにしていたんだと思う。

また一方で、母自身も闘病でそれどころではなかったのかもしれない。

 

 

私は、闘病中の母の気持ちも多く聞くことをせずに母を見送ってしまった。

母の弱音を聞くのはすごく怖かった。
一緒にいる時はどうしても当たり障りのない会話ばかりしていた。

 

死を覚悟した母の、深い気持ちを聞いておかなかったことは、私が晩年を迎える時、また新ためて後悔するのだろうな。

 

今、子どもが大きくなってきて「私が小学生の時にこんなことがあったけど、母はどう思っていたのだろう」と思うことが良くある。

 

本当ならいますぐ実家に帰って、ぺちゃくちゃと母とおしゃべりしたい。

もっといろんな話をしたい。

「私は幼少期よく入院していたみたいだけど、大変だった?」

「私が小学校で良くお腹痛いと言ってたけど、お母さんは責めなかったね」

「仕事を辞めた時何が大変だった?」

「母子手帳に書いてある病歴が詳しくて、今本当に参考になってるよ、ありがとう。」

 

母の答え合せ育児を、今になって聞いてみたかった。

それはもう、かなわないのだけど。

 

親は、子どもが完全に自立して「お母さんたち、十分やりたいことやったよね」と言うくらいになってから旅立ってほしい。

亡くなって5年経つ今でも、母のことを思うと涙が出てくる。

もっと、元気で長生きしてほしかった。

母になった私は、私の母だった人の人生や考えていたことをもっと、話したかったな。

 

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